出生率1.14、10年連続最低更新――この数字が突きつけている「本当の問題」

2026年6月4日
昨日、厚生労働省から発表されたニュースが、多くの人の目に留まりました。
2025年の合計特殊出生率が1.14。前年の1.15からさらに0.01ポイント下がり、過去最低を10年連続で更新しました。出生数は67万1236人で、統計開始(1899年)以来、最も少ない数字です。
「また最低更新か」と感じた方も多いかもしれません。でもこの数字を、「社会全体の問題」として流してしまう前に、少し立ち止まって考えてみたいことがあります。
数字の裏にある「個人の事情」
出生率1.14という数字は、マクロな統計です。でもその裏には、子どもを持ちたかったのに持てなかった人、持ちたいと思っているけれど踏み出せていない人、「自分には無理」と諦めた人、一人ひとりの事情があります。
「少子化」という言葉を使うと、どうしても政策や社会構造の話になりがちです。でも少子化の実態は、個人の選択の積み重ねです。
なぜ子どもを持てなかったのか。なぜ持たなかったのか。その理由を丁寧に見ていくと、「結婚できなかったから」だけでは説明がつかないことが分かります。
婚姻数は増えているのに、出生率は下がり続ける
今回のデータで注目したいのは、婚姻件数が2年連続で増加しているという事実です。2025年の婚姻数は48万9119組で、前年比0.8%増でした。
結婚する人が増えているのに、出生率は下がっている。
この矛盾をどう読むか。専門家の間では、「たとえ婚姻数が回復しても、夫婦が持つ子どもの数自体が減っている」という指摘が出ています。有配偶出生率(結婚している夫婦の出生率)の低下が、少子化の新たな要因として浮かび上がっているのです。
つまり、「結婚を増やせば出生率が上がる」という従来の発想だけでは、もう少子化には対応できない段階に来ているということです。
「結婚してから子どもを」という前提が揺らいでいる
人口置換水準(人口を長期的に維持するのに必要な出生率)は2.07です。現在の1.14は、その半分にも届きません。
この差を埋めるために政府が取り組んできた対策の多くは、「結婚・出産・子育て支援」というセットで語られてきました。結婚を促し、結婚した夫婦が子どもを産みやすくする。そういうアプローチです。
でも現実として、結婚しない・できない人は増えています。50歳時点での未婚率は男性28%、女性18%という時代です。そして結婚した夫婦でも、子どもを持つ数が減っています。
「結婚してから子どもを持つ」という前提そのものが、社会の実態と少しずつずれ始めています。
「産みたい人が産める社会」という発想へ
ここで一つの問いを立てたいと思います。
「産みたいと思っている人が、産めていないケースはどれだけあるか」
婚活市場を経ずに、パートナーなしで子どもを持つという選択肢が、日本ではまだほとんど認知されていません。選択的シングルマザー(SMC)という言葉は広まりつつありますが、実際にそれを実現するための情報・制度・支援は、欧米諸国と比べると大きく遅れています。
海外ではすでに、精子バンクや精子提供を利用してシングルで子どもを持つ女性が増えています。デンマークやアメリカでは、精子提供を利用した出産は決して珍しいことではありません。
日本でも、子どもを持ちたいという気持ちを持ちながら「パートナーがいないから」「結婚できていないから」という理由で諦めている女性が、相当数いるはずです。その人たちに「別の道がある」ことを伝えることが、少子化対策の一つの側面にもなりうる。そう考えています。
「非婚出生」という選択肢が広がらない日本の特殊性
国際比較をしてみると、日本の少子化の特殊性がよく分かります。
フランス・スウェーデン・デンマークなど出生率が比較的高い欧州諸国に共通するのは、「婚外子(結婚していない親から生まれた子ども)の割合が高い」という点です。フランスでは出生数の60%以上が婚外子です。
一方、日本の婚外子の割合は約3%。先進国の中で突出して低い水準です。
この差は、「日本人が結婚好きだから」ではありません。婚外子に対する社会的・制度的なハードルが高いからです。法律上の扱い、行政手続きの複雑さ、周囲の視線……結婚していない状態で子どもを産むことへの障壁が、日本では依然として大きい。
この障壁を下げることなく「少子化対策」を語っても、根本的な解決にはなりません。
精子提供という選択肢が持つ社会的な意味
私が精子提供の活動を続けているのは、個人的な支援の気持ちからです。でも同時に、「産みたい人が産める選択肢を広げること」が、日本社会全体にとっても意味があると信じているからでもあります。
選択的シングルマザーとして子どもを持つ女性が一人増えることは、出生数が一人増えることです。精子提供を通じて、FTMトランスジェンダーの方が子どもを持てることも、出生数の一つです。無精子症のパートナーがいるカップルが、精子提供で子どもを持てることも同じです。
「結婚した夫婦から子どもが生まれる」という一つのルートだけを支援するのではなく、多様な形で「産みたい人が産める」社会に向かうことが、少子化という課題への現実的なアプローチだと思っています。
数字に流されず、「自分の選択」を考える
出生率1.14というニュースは、多くの人が「社会の問題」として受け取ります。でもこの記事を読んでいる方の中に、「子どもが欲しい」という気持ちを持ちながら、何らかの理由で踏み出せていない方がいるなら、一つだけ伝えたいことがあります。
あなたの「欲しい」という気持ちは、諦める理由にはなりません。
パートナーがいないから。まだ結婚できていないから。そういう理由で子どもを持つことを諦めなくていい選択肢が、今はあります。
まず知ることから始めてみてください。情報を持つことは、決断ではありません。選択肢が広がるだけです。
当サイトでは、精子提供について「まだ決めていない段階」からの相談を受け付けています。少子化のニュースを見て何か感じた方、子どもを持つことを漠然と考えている方、どんな段階からでも話しかけてみてください。
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まとめ
- 2025年の合計特殊出生率は1.14、10年連続で過去最低を更新。出生数は67万1236人で統計開始以来最少
- 婚姻数は2年連続増加しているにもかかわらず出生率は低下。夫婦が持つ子どもの数自体が減っている
- 「結婚してから子どもを」という前提が、社会の実態と乖離し始めている
- 日本の婚外子比率は約3%と先進国で突出して低い。「産みたい人が産める」制度・環境の整備が遅れている
- 選択的シングルマザー・LGBTQ・無精子症カップルへの精子提供は、「産みたい人が産める選択肢」を広げる一つの手段
- 少子化のニュースを「社会の問題」として流す前に、「自分の選択」を考えるきっかけにしてほしい
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