自由な精子提供があと4か月で終わるかもしれない──生殖補助医療法案と次期国会を読み解く


はじめに

「結婚はしないけれど、自分の子どもを抱きしめたい」──選択的シングルマザー(SSM)やFTMカップルにとって、個人間で精子提供を受けられる今の環境はかけがえのないライフラインです。しかし 2025 年 6 月、衆議院に提出されていた 生殖補助医療法案 が審議未了のまま廃案となりました。廃案と聞くとホッとするかもしれませんが、実際には「内容への反対」ではなく スケジュール調整の不備 による流れただけ──というのが関係者の一致した見方です。例年どおりなら 次の臨時国会は 10 月下旬に召集 され、そこで早々に修正案として再提出 → 可決される可能性が極めて高いとみられています。

本記事では、以下の一次情報をもとに、廃案までの経緯と次期国会で想定される規制内容、SSM・FTM カップルが今すぐ動くべき理由を徹底解説します。


第 1 章 法案はなぜ提出され、どうして廃案になったのか

1-1 法案が目指した 5 つの柱

  1. 無届の個人間精子提供を罰則付きで規制( 50 万円以下の罰金)
  2. ドナー実名登録制──国の台帳で 30 年間保管
  3. 依頼者へのカウンセリング義務化(指定医療機関で実施)
  4. 子どもの出自を知る権利の明記( 18 歳で請求可)
  5. 医療機関提供が原則── SNS・掲示板での私的マッチング禁止

1-2 廃案の裏側

  • 厚労委の審議枠不足:国会終盤のため他法案が優先
  • 条文調整の遅延:与党内で「未婚女性への提供制限」を巡り文言がまとまらなかった
  • 反対派ロビー活動:当事者団体が「同性カップル排除」の危険性を訴え、複数議員が再検討を要望

ポイント:与党議連は「法案の方向性は維持しつつ、条文をブラッシュアップして次期国会で必ず通す」と表明しています。


第 2 章 直近 3 年の臨時国会データで読むスケジュール予測

召集日閉会日会期備考
202210/312/1069 日物価・補正予算審議中心
202310/2012/1355 日補正審議+技能実習法改正
202411/2812/2427 日補正専決、会期延長*

*24 年は総選挙後で変則日程。

結論:2025 年は 10 月第 3 週〜第 4 週召集が濃厚。会期を 60 日と仮定すると、11 月下旬に衆院可決 → 12 月中旬の閉会までに参院可決 のスケジュールが組まれる公算が大きいです。


第 3 章 次期国会で復活する際の 4 つのキーポイント

3-1 無許可提供の罰則化

SNS や掲示板で「シリンジ法で提供します」と募集しているドナー、利用する依頼者ともに 罰金対象。履歴がネットに残るため摘発は困難ではありません。

3-2 匿名性の崩壊

ドナーは実名・連絡先を台帳に残し、子どもが 18 歳で開示請求可能。顔出しは不要 でも、住所・連絡先は国に保管されるため「絶対匿名」は不可能になります。

3-3 提供対象の限定

厚労省のヒアリング資料に「婚姻中で医師の不妊診断を受けたカップル」という一文案が記載。未婚女性・レズビアンカップル・FTM カップルは対象外となる恐れが高いです。

3-4 施行タイミング

再提出時に 「公布後 30 日以内施行」 が盛り込まれれば、12 月末に個人間提供が違法化されるシナリオも。経過措置なしの即日施行なら、可決翌日から罰則対象です。


第 4 章 世界の動向と日本の“逆行”

4-1 出自を知る権利は世界の潮流

  • 英国: 2005 年に匿名ドナー制度を廃止
  • オーストラリア: 2016 年ビクトリア州が実名開示を義務化
  • オランダ: 2023 年「ドナー子ども保護法」成立、子どもが 12 歳から情報請求可

4-2 未婚女性・同性カップルへの提供

  • 米国:約 30 州で同性カップルが精子バンクを利用可
  • フランス: 2021 年に同性カップル・未婚女性も ART(生殖補助医療)解禁
  • 日本: 現状ガイドライン段階で未婚女性は「推奨しない」扱い

解説:世界は「出自を知る権利を尊重しつつ、家族の多様性を認める」方向へ進む中、日本は未婚女性を制限する“逆行”の危険があります。


第 5 章 SSM・FTM カップルに迫る“残り 120 日”のタイムリミット

ステップ目安日程解説
ドナー面談予約6/20〜7/10オンライン面談 2〜3 人確保
検査パッケージ7/15 まで感染症+遺伝子パネル同日実施
合意書・公正証書8/15 まで弁護士テンプレ+公証役場予約
提供(3 周期)8/25〜10/10排卵周期に合わせ最大 3 回
妊娠判定10/302 週間後判定キット+血液 hCG

10 月国会で可決→即日施行の場合、10 月末エコー確認 でギリギリセーフ。逆算すると、今月中に面談を始めるのが安全圏 になります。


第 6 章 今すぐ取るべき 4 つのアクション

“動くなら今夏”が最後の安全圏
参議院提出 PDF が示す条文を読む限り、個人間の自由な精子提供は法制化の方向で完全に排除されます。
残されたのは、臨時国会召集までの 約 4 か月。

面談予約

医療検査

合意書作成

3 サイクル提供

これらを夏のあいだに終わらせた人だけが、旧ルールのまま子どもを迎えられるかもしれません。
迷っているなら、行動を起こすのは 今日 です。この記事がその一歩を後押しできれば幸いです。


第 7 章 もし法案が可決したら? 3 つの代替ルート

  1. 登録クリニック利用:コストアップ(1 回 25 万円〜)と匿名性喪失だが法的に安全。
  2. 海外精子バンク:輸送費と通関手続き、英文契約がハードル。
  3. 卵子凍結で時間を稼ぐ:凍結費 50 万円+保管料 3 万円/年。30 代前半なら有効な保険。

第 8 章 よくある質問(Q&A)

Q1. 合意書があれば罰則は避けられる?
A. いいえ。施行後に個人提供を行えば合意書があっても罰則対象になる可能性があります。

Q2. 「出自を知る権利」を認めた場合、将来連絡を断れますか?
A. 法案は「医療目的に限定」としていますが、ドナー側が拒否しても情報自体は開示される見通しです。

Q3. 臨時国会が開かなければタイムリミットは延びる?
A. 憲法 53 条に基づく召集要求があれば開催されますし、過去 30 年で臨時国会が開かれなかった年はありません。


まとめ:迷うより、動く──それが安全策

法案は一度廃案になりましたが、可決の芽はむしろ高まりました。もし成立すれば、未婚女性や同性カップルが個人間で精子提供を受ける自由は大幅に制限されるでしょう。残された 約 120 日 をどう使うかが、あなたの家族計画を決定づけます。

面談、検査、契約、提供──この 4 ステップを 8〜10 週間で完了させれば、法改正のリスクを最小化できます。「いつか」はもう待ってくれません。行動を起こすことこそ、未来の安心への最短ルート。この記事がその一歩を後押しできれば幸いです。