レズビアンカップルが子どもを望むとき──精子提供という選択肢とその現実

LGBTQ+への理解が少しずつ進む現代において、同性カップルが「家族を持ちたい」と考えることは、もはや特別なことではありません。特にレズビアンカップルにとって、子どもを持つという希望は、自然でありながらも、まだまだ社会制度やサポートが整っていない現実があります。
本記事では、レズビアンカップルが子どもを望む際に直面する選択肢、精子提供という手段、そのメリット・デメリット、
そして社会的課題や当事者の声をもとに、未来への展望について考えていきます。
家族を築きたいという思いは「普通の願い」
同性カップルが子どもを持ちたいと望むことは、愛する人と共に家庭を築きたいという、きわめて人間的な感情です。
近年、海外では同性婚が認められ、養子縁組や精子・卵子提供を通じて子どもを迎えるカップルも増えてきました。
しかし日本においては、法律面での制約が多く、異性愛者のカップルとは異なるハードルが存在します。
その中でも、レズビアンカップルが「自分たちで子どもを産み、育てたい」と思ったとき、選択肢のひとつとして浮かび上がるのが「精子提供」です。
精子提供とは?
精子提供とは、第三者から精子の提供を受け、人工授精や体外受精によって妊娠を目指す方法です。
提供方法は大きく分けて以下の二つです。
- 精子バンクを利用する方法
- 個人から提供を受ける方法(マッチングや紹介など)
いずれも一長一短があり、希望する形や条件、費用、安全性を踏まえて慎重な判断が求められます。
個人からの提供の場合、完全に個人間でシリンジ法のやり取りをするケースと、クリニックを介して人工授精をするケースがあります。
提供相手がインターネットで知り合った方の場合、個人間でのシリンジ法のやり取りになるケースが多いです。トラブルも多いので、しっかりと事前に準備をしておきましょう。
レズビアンカップルが精子提供を選ぶ理由
1. 自分たちの遺伝子を持つ子どもを迎えたい
精子提供による妊娠は、一方のパートナーが妊娠・出産を担うことができ、自身の身体で子どもを育むことが可能です。これは、パートナーとの間で遺伝的なつながりを感じられる貴重な手段となります。
2. 出産から育児まで一貫して関われる
養子縁組では難しい、妊娠中の経験や出産のプロセスを共有できることも、大きな魅力です。パートナーとともに命を迎える時間は、二人の絆をより深めるものとなります。
3. 周囲にカミングアウトせずに妊娠できる場合も
人工授精やシリンジ法で妊娠することで、戸籍や見た目上は「シングルマザー」として出産するケースもあり、家族や職場に対してパートナーシップを公にしないまま進めることも可能です。
精子提供のメリットと注意点
精子提供による妊娠は、レズビアンカップルにとって理にかなった方法である一方、考慮すべき点もいくつかあります。
メリット
- パートナーの妊娠を通じて強い絆を築ける
- 養子縁組よりも早く妊娠・出産を目指せる
- 法的には母親として自然に認められる(出産した人)
注意点・デメリット
- 精子バンクは日本にほとんど存在せず、海外の利用には高額な費用と輸送・法的リスクが伴う
- 個人提供の場合、ドナーとのトラブルリスク(認知・養育費・将来の関与)
- 医療機関が同性カップルに対応していないケースも多い(特に日本ではこのケースが多いです)
- 法律上、非出産側のパートナーは親として認められない(親権・法的保護の問題)
また、レズビアンカップルで個人での精子提供を受ける場合、FTMなどの性転換後に籍を入れているカップルと比べて比較的に提供を受けやすいです。
個人間の精子提供をクリニックを利用して行う際には、お互いに独身である必要があります。
籍を入れている場合、クリニックでは一般的に体外受精(シリンジ法)の手伝いが出来なくなってしまうため、FTMの方はお気を付けください。
海外との比較と制度の課題
欧米諸国、特にオランダやカナダ、スウェーデンなどでは、同性カップルによる精子提供や共同親権が法律的に整備され、実際に家族を築くことが当たり前になっています。
一方日本では、同性婚が未承認であることに加え、精子提供に関する法制度も未整備です。そのため、レズビアンカップルが安心して妊娠・出産・育児を進めるためには、まだまだ多くの障壁が存在します。
それでも、東京都など一部の自治体ではパートナーシップ制度を導入し、病院の立ち会いや保育園の書類での「親」としての扱いが可能になるなど、小さな前進も見られています。
当事者の声──「子どもを育てたい」その強い願い
「血縁ではないけれど、ふたりで愛して育てられるなら、それは十分に家族だと思う」
「お腹の中で子どもを育てられることは、私にとって母としての証」
「制度が追いついていなくても、子どもを持つ選択は今の私たちにとって必要な一歩」
こうした当事者の声は、今まさに精子提供を検討しているカップルにとって、背中を押してくれるものとなるでしょう。情報が不足し、制度が整っていないからこそ、仲間同士の体験談やネットワークが力になります。
まとめ
レズビアンカップルにとって、精子提供を通じて子どもを持つことは、愛に基づいた家族づくりの一形態です。しかしながら、日本ではまだ制度的な課題や社会的な偏見が残っており、選択には慎重さと強い意志が求められます。
それでも、こうした選択をする人たちの存在が可視化されることで、社会の理解が進み、新しい家族の形が受け入れられていくでしょう。レズビアンカップルが安心して子育てができる未来のために、制度と意識の両面からの変化が求められています。
私もレズビアンの方で精子提供を希望されている方とよく面談させていただいています。
皆様、悩みは様々なので新味に寄り添うようにしています。
精子提供についてご相談いただく際には、些細なことでもお伝えください。